第五回 フランスのブタ、アフリカの秘茸。 前篇
ある食材に思いを致す時、私はそれを純粋に、大量に食べたいと願う。毎
日でも構わない。とにかく、浴びるほどに。
海産物だったら、それが獲れる港町まで行った。漁協をのぞき、セリを見
物し、これぞというものを入手し、食べに食べた。チャンスがあれば漁船に
乗るし、漁師たちが海の底がどうなっているか分からないと首をひねった場
合、日を改めて底まで潜った。
トリュフとはいかなるものか。
かおり付けではなく、それを丸ごと食べる料理はないものだろうか。あの
マツタケにしても、焼いて丸ごと食べたりする。イタリア料理やフランス料
理をくまなく調べたが、トリュフの丸焼きにはお目にかかれなかった。
調べたのは、しかし無駄ではなかった。トリュフがフランスやイタリアの
山岳地帯で産するし、フランスでは、ブタを連れて探しに行くのだそうだ。
使用するのはメスであるし、これはトリュフの匂いが、オスのブタが発情期に
分泌する性的な誘引物質、フェロモンに似ているせいだと聞いた。
旅の途中、アフリカで、トリュフの話にぶつかった。北ではなく、南の
端、ナミビアで案内人のデビットが、あるんですね、これが、と教えてくれ
た。
「私たちはデザートポテト、砂漠のじゃが芋と呼んでいます。正真正銘の
トリュフです。ええ、いくらもしません。時期になると道端で売ってまし
た。野菜料理の中にぶちこんで煮るんです。でも、今は駄目です。仲買人が
さっと集めて、ヨーロッパへ持って行きます。それよりもアリヅカのキノ
コ、これが絶品なんですよ。サシーミが出来るんです。白いキノコで、腕の
太さくらいあります。カルパッチョ・デ・フンギ。薄くスライスして、オリ
ーブオイルをかけ、塩こしょう、これが旨いんですよ。雨期のはじめにある
のですが、雨期を祝うご馳走です。」
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