連載 ムツゴロウの「食べて幸せ」

 

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第二回 ついに食べた、巨魚の刺身 前編

 望めよ、さらば与えられん。願えよ、さらば叶えられん。そのような文句
が聖なる経典にあるかどうかは知らないけれど、ピラルク、ピラルクと唱え
ていたら、知人友人があわれに思い、情報の糸をたぐり寄せ、巨魚に会える
可能性を見出してくれた。叩けよ、さらば開かれん。開け、ゴマ。
 それは、サンパウロから、アマゾンの秘境へと出掛ける、半分趣味、半分
実益の一行だった。彼らは、一般の人が入ることが出来ないインディオの居
留地への入境許可を買い、釣れた魚を冷蔵庫に詰めて持ち帰り、都会のレス
トランにおろすのである。秘境でとれる魚は、牛肉よりもはるかに高価だっ
た。
 得たりや応と参加した。はじめの八百キロはコンクリートの道だったが、
奥へと右に折れてからは、車が何台か通った跡があるだけだった。川を渡る
フェリーときたら、丸太を組んだだけの筏であり、自分たちで、張られたワ
イヤーをたぐって進んだ。
 かくて、原始の世界に到達した。
 テントを張り、試みに餌を投げると、ヘラブナ大のピラニアが釣れた。
 夜、どこからともなく、インディオが顔を出した。足音がまったくしなか
ったので、暗闇からわき出した感じがした。
 その一人、ティモと仲よくなった。手ぶりと絵を混じえ、他の人は高級魚、
トクナレやピラララをねらうけれど、私は、ピラルクが欲しいと説明した。
 ティモは、にっこり笑い、ボン、よし分かったと言って闇に消えた。
 翌朝、ティモが川から現われた。こいよ、と手招きした。彼のカヌーが待
っていた。
 アマゾン源流は、小さな流れが入り組み、突然、大きな湖水が現われたり
した。ピラルクは、このような上流地帯を好むのである。
 ティモは、ハエナワをしかけていた。そして、なんとでかいピラルクが、
ハリの一つに喰らいついていた。彼は、釣り糸――と言うよりも、太いロー
プを手繰り寄せ、棍棒の一撃でとどめをさした。
 キャンプの基地まで水中を引いていき、エラにロープを通し、五人がかり
で木に吊した。
自分の身長よりも大きく、二メートルは越えていた。
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ムツゴロウの「食べて幸せ」は月刊「健康医学」(健康医学社発行)に連載しています。

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